Prosper Global は、30 か国以上で 200 を超えるプログラムを運営する国際人道支援団体です。コミュニティへの説明責任に関する報告制度「CARM」を通じて、支援を受ける人々が質問や提案をしたり、問題の発生を報告したりできる窓口を設けています。現在、CARM の担当チームは Claude を活用し、寄せられた声の翻訳、タグ付け、深刻度の判定を、従来よりも大幅に短い時間で行っています。
Prosper Global が Claude の活用で実現したこと:
- 地域から寄せられる声の分析時間を、1 週間から約 1 時間に短縮
- 13 チームでの試験導入において、測定対象業務の所要時間を平均 88% 削減
- 条件を管理した検証で、Claude が提案した深刻度の判定と、訓練を受けた担当者による判定が 75% 一致
- 29 の測定対象業務で、1 か月間に 540 時間以上を削減
- 単一のサービス提供元について、ベンダーのセキュリティ審査と正式なプライバシー影響評価を完了
課題
深刻な報告が、未対応のまま順番待ちになるとき
人道支援では、地域の人々から声を受け付ける仕組みを設けることが、基本的な要件とされています。支援する人々に対して説明責任を果たすための取り組みの一つです。Prosper Global は、CARM によってこの要件に応えています。同団体のプログラム参加者や周辺地域に暮らす人々は、何がうまくいっているのか、何がうまくいっていないのか、どのような問題が起きたのかを、団体に伝えることができます。寄せられる内容は、支援に関する質問から、セーフガーディングに関する懸念、職員の行動に対する苦情まで多岐にわたります。報告は、ホットライン、フォーム、相談窓口、対面での会話を通じて届きます。ビルマ語やウクライナ語からスペイン語、フランス語まで、数十に及ぶ現地の言語で寄せられることも珍しくありません。Claude の導入前は、担当者が報告を一つずつ文字に起こし、翻訳して内容を読み、テーマを分類し、団体の指針に沿って深刻度を判定したうえで、対応する担当先に振り分ける必要がありました。
報告の大半は、プログラムに関する通常の意見や感想です。しかし、そうではないものもあります。Prosper Global の AI ソリューション・デリバリーマネージャー、Nayid Orozco 氏は、次のように述べています。「深刻な報告が読まれないまま処理待ちになったり、責任者に引き継ぐべき報告が通常の案件として記録されたりすれば、単なるデータの見落としでは済みません。リスクを冒して声を上げてくれた人の信頼を裏切り、保護が必要な状況を放置したことにもなりかねないのです」
負担が大きかったのは、寄せられる声の量、言語、判定の一貫性という三つの面でした。各チームには、迅速に処理できる量を超える声が寄せられていました。現地の方言で書かれた内容の翻訳や対応も難しく、同じ案件でも担当者によって判定が異なることがありました。そのため、職員の時間が取られ、対応も遅れていました。「人々を守る仕組みになるか、単にフォームを集めるだけで終わるかは、対応の速さと深刻度の正確な判定にかかっています」と Orozco 氏は語ります。

Read the Q&A with AI Solutions and Delivery Manager Nayid Orozco on AI's biggest shift in humanitarian work.
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モデルを選定対象から外す判断基準
セーフガーディングにも関わりうる案件の初期評価では、最初に確認したのは「処理の速さではありませんでした」と Orozco 氏は振り返ります。「確認したのは、データ、責任、管理のあり方でした」。Prosper Global が求めていたのは、同団体のデータを学習に使用せず、入力データの保持期間を可能な限り短くし、約束だけでなく実際の認証を示せるサービス提供元でした。Anthropic の商用利用規約は、データの利用と保持に関する両要件を満たしていました。Orozco 氏によると、その規約と ISO 27001、ISO 42001、SOC 2 の認証がそろっていたからこそ、「初めて検討を始めることができた」のです。
「データの利用方法に少しでも曖昧さがあったり、機微な内容について、事実ではないことを自信ありげに作り出す兆候が見られたりしたら、そのモデルは選定対象から外していました」と Orozco 氏は説明します。「私たちは、信用して任せるのではなく、実際の案件を処理させ、出力を確認して検証しました」
CARM の担当者は、実際に寄せられた 20 件の声を Claude に入力し、チームの標準指針に沿って深刻度を判定させたうえで、元の担当者による判定と比較しました。Claude の判定は、約 75% の割合で一致しました。「最も役に立ったのは、判定が一致しなかった案件でした」と Orozco 氏は指摘します。「不一致の一部は、判定基準そのものに曖昧さがあったことに起因しており、元の担当者の判定が正しかったか、チームが見直すきっかけになった案件もありました。「自動判定の基準となる結果が得られ、私たち自身の判定に一貫性があるかを点検することもできました。取り組みを続けられると確信したのは、判定の違いが無作為に生じたものではなく、理由を説明でき、学びにつながるものだったからです」。当初は、同じ案件を再び処理すると、Claude が異なる判定を出す場合がありました。しかし、深刻度の定義と Claude に与える指針を明確にすると、分類の一貫性と正確性が向上しました。
信頼を得る必要があったのは、モデルの回答だけではありません。調達面でも同様でした。。Prosper Global は、単一の商用利用規約とデータ処理契約に基づき、日常業務には Claude Enterprise のインターフェースを、自動判定などの実運用業務には Claude API を利用しています。チームは Anthropic が公開している資料をもとに、ベンダー審査書類の作成と正式なプライバシー影響評価を完了しました。「大規模な調達チームやセキュリティチームを持たない非営利団体にとって、契約や審査対象を一つにまとめられたことは、審査期間の短縮に直結しました」と同氏は付け加えます。
運用の仕組み:判断の責任は、引き続き人が担う
現在の試験運用では、多くの場合、現地の言語で報告が届きます。個人を直接特定できる情報や特に機微な内容を確認して伏せたうえで、Claude がわかりやすい英語に翻訳し、テーマ別のタグを付けます。さらに、チームの 6 段階の判定表に沿って深刻度を提案し、簡潔な根拠も示します。CARM の職員は出力を原文と照合し、判定を確定するか、必要に応じて修正します。これらの作業は、判定指針を共有のプロジェクトナレッジとして読み込ませた Claude Enterprise のインターフェース上で行います。
「Claude が最終判断を下すことはありません」と Orozco 氏は述べています。「翻訳、タグ付け、初期判定は速くなりますが、訓練を受けた職員が必ず出力を確認し、判断の責任を負います。説明責任を担うのが引き続き人であるからこそ、地域の人々はこのプロセスを信頼できるのです」
Orozco 氏は、次のように強調します。「現在もまだ検証段階であり、完全に統合された本番システムではありません。CARM では、実運用の業務を任せる前に、Claude を慎重に試験導入し、案件ごとに結果を確認しています」。チームが目指しているのは、Claude の Projects で CARM の判定指針と標準プロンプトを共有する仕組みです。これにより、どの国であっても、寄せられた声を担当する職員、つまり Prosper Global が「フォーカルポイント」と呼ぶ担当者が、自分で環境を整えなくても、一貫した翻訳、テーマ別のタグ付け、深刻度の判定案を得られるようになります。今後数か月以内に、CARM に寄せられる声の管理システムである Zendesk と連携する予定です。
「導入を進めるうえで重要なのは、技術以上に人です」と同氏は指摘します。「フォーカルポイントに、プロンプトの書き方を教える必要があります。そして、それと同じくらい重要なのが、返ってきた内容が妥当かどうかを確認する方法を教えることです」。チームは、検証で確信を得られた範囲でのみ、活用を広げています。
「Claude の活用で実現した仕事は、以前なら到底できなかったことばかりです」
成果
1 週間かかっていた分析を、約 1 時間で
CARM のチームメンバーによると、以前は最大 1 週間かかっていた、寄せられた声の分析が、現在は約 1 時間で完了します。また、作成に 8 時間かかっていたレポートも、30 分で作成できるようになりました。処理が速くなったことで、深刻な報告が読まれないまま順番待ちになることがなくなり、報告した人々にも、より早く返答できるようになっています。
成果は、一つのチームにとどまりません。Prosper Global の企業パートナーシップ部門でディレクターを務める Emily Joy 氏は、「Claude の活用で実現した仕事には、以前なら到底できなかったものがあります」と述べています。モニタリング・評価・学習(MEL)の分野では、約 280 人時と見積もられていた調査設計が約 20 人時で完了しました。また、Prosper Global のスーダンでの調査に用いる市場データセットの分析は、約 1 週間から 1 日半に短縮され、その際に作成した処理スクリプトは現在、実運用されています。開発の専門スキルを持たない職員についても、「以前は自力でできなかったレポートの実行や、疑問への答えを得る作業を、自分でできるようになりました」と同氏は話します。
Prosper Global が試験導入の中間段階で、13 チームの利用者 42 人を対象に行った調査では、98% が業務をより速く進められるようになったと回答しました。測定対象となった業務の所要時間は平均 88% 短縮され、29 の業務で、1 か月間に 540 時間以上が削減されました。
「MEL の同僚が、最も心配しているのは、試験導入が終わったら Claude を使えなくなるかもしれないことだと言っていました。」Orozco 氏は、印象に残った反応をこう振り返ります。「最も多く上がる不満が、ツールを失うことへの不安だというのは、どれほど業務に定着していたかを物語っています。」
次の段階は、CARM を検証から本格導入へと移し、より多くの国で、寄せられる声を担当する職員が共有プロジェクトを利用できるようにすることです。「こうした取り組み全体の基盤として、AI の導入とガバナンスの枠組みを整えています。場当たり的に活用を広げるのではなく、計画的かつ責任を持って拡大していくためです」と Orozco 氏は述べています。負荷の大きい実運用業務を Claude API に移すことが、この規模での展開を、同氏の言葉を借りれば「理論上の話ではなく、現実的なもの」にします。
「最も多く上がる不満が、ツールを失うことへの不安だというのは、どれほど業務に定着していたかを物語っています。」

