スキルと MCP サーバーによる Claude の機能拡張
スキルと MCP を連携させ、独自のワークフローに沿って外部システムやプラットフォームを効果的に活用するエージェントを構築する方法をご紹介します。
アップデート:クロスプラットフォームのポータビリティを実現するオープンスタンダードとして、エージェントスキルを公開しました。(2025年12月18日)
Skills の提供開始以来、特に多く寄せられる質問が2つあります。それは「スキルと MCP はどのように連携するのか?」ということです。そして「両者をどのように使い分けるべきか?」という点です。
Model Context Protocol(MCP)は Claude をサードパーティ製ツールに接続する役割を担い、スキルはそれらのツールを適切に使いこなす方法を Claude に学習させます。2つを組み合わせることで、常に修正が必要な一般的なプロセスではなく、チーム独自のワークフローに忠実に従うエージェントを構築できます。
例えば、MCP を介して Notion に接続すれば、Claude はワークスペース内を検索できるようになります。そこに会議準備のスキルを追加すると Claude は参照すべきページはどれか、事前資料はどのようにまとめるか、会議メモは何を基準に仕上げるべきかまで理解します。単につながっているだけの状態から、実際に使える連携へと変わります。
本記事ではスキルと MCP の違いと役割を整理し、両者を組み合わせてワークフローに沿ったエージェントを構築する方法を解説します。あわせて、実際の活用例もご紹介します。
スキルと MCP について
壊れたキャビネットを修理するため、ホームセンターに足を運んだ場面を想像してみてください。店内には木工用ボンドやクランプ、交換用の蝶番など、必要なものはすべて揃っています。しかし、何を買うべきか、そしてそれをどう使うべきかを知っているかどうかは全く別の問題です。
MCP とは、いわば自由に店内を歩き回れる状態を指します。一方のスキルは、店員の専門知識のようなものです。どれほど豊富な在庫があっても、必要な品物やその使い道がわからなければ意味がありません。修理の手順を案内し、適切な道具を教え、正しい技術を実演してくれる親切な店員こそが、スキルにあたる存在と言えます。
より具体的に言えば、MCP サーバーは Claude にカスタマーの外部システム、サービス、プラットフォームへのアクセス権を付与します。一方、スキルは Claude がこれらの接続を効果的に活用するために必要なコンテキストを提供し、アクセス権を得た Claude に何をすべきかを教えます。
スキルが提供するコンテキストがなければ、Claude はカスタマーが何を求めているかを推測しなければなりません。しかしスキルがあれば、Claude はあらかじめ定めた手順に沿って進めることができます。
スキルと MCP がうまく連携する理由
MCP は接続性を担い、外部システムへの安全かつ標準化されたアクセスを提供します。GitHub や Salesforce、Notion のほか、独自の社内 API など、接続先が何であれ、MCP サーバーを介することで Claude は必要なツールやデータへ到達できるようになります。
スキルは専門知識を担います。単なるツールアクセスを、確実な成果へと結びつけるためのドメイン知識とワークフロー設計が含まれています。CRM を検索するタイミングや、結果から探し出すべき情報、出力のフォーマット方法、さらには個別対応が求められる例外的なケースの判断基準などをスキルが把握しています。
このように役割を分離することで、柔軟に組み合わせ可能なアーキテクチャが保たれます。単一のスキルで複数の MCP サーバーをオーケストレーションすることも、一つの MCP サーバーで数十種類ものスキルをサポートすることも可能です。新たな接続先を追加すれば既存のスキルに組み込むことができ、スキルを洗練させれば、接続済みのあらゆるツールでその効果を発揮します。
スキルと MCP を組み合わせることで以下が実現します:
明確な情報の発見:Claude が情報の所在を当てずっぽうに探すことがなくなります。例えば会議準備のスキルなら、「まずプロジェクトのページを確認し、次に前回の議事録、そして関係者のプロフィールを見る」と指定できます。研究スキルであれば、「共有ドライブから着手して CRM と照合し、足りない情報をウェブ検索で補う」といった具合です。どのタスクにどの情報源が重要かという組織独自の知識が、スキルに組み込まれることを意味します。
安定した手順実行:複数のステップから成るワークフローの結果が予測可能になります。スキルがない場合、Claude は必要な情報がすべて揃っているか確認する前に、データの抽出やフォーマット化を進めてしまう可能性があります。スキルがあれば手順が明確に定義されるため、Claude は毎回同じプロセスで正確にワークフローを実行します。
一貫したパフォーマンス:出力結果が組織の基準を確実に満たすようになります。ありきたりな結果では、そのまま使えないことが少なくありません。スキルはチームにとって「完了」といえる状態を定めます。適切な構成になっているか、情報の分量は十分か、想定する読み手にふさわしいトーンになっているか。その基準をあらかじめ明確にします。
時間とともに、関連し合うスキルと接続が積み重なり、特定の分野における専門性を Claude が身につけていきます。
関連情報:Tim O'Reilly が語るMCP とスキルがオープンソース AI にもたらす意味について

スキルと MCP の役割が重なりやすい領域
MCP サーバーには、ツールの使い方に関するヒントや、よくあるタスク向けのプロンプトといった形で指示を組み込むことができます。これにより、ツール固有の知識をそのツールの側に持たせておけます。ただし設計の観点から、こうした指示はあくまで一般的な内容に留めておく必要があります。
基本的な考え方として、MCP の指示は「サーバーやツールを正しく使う方法」をカバーします。一方、スキルの指示は「特定の業務プロセスや複数のサーバーをまたぐ手順の中で、それらのツールをどう活用するか」を定義するものです。
例えば、Salesforce の MCP サーバーが規定するのは、クエリの構文や API の形式といった技術的な作法です。対するスキルは、まずどのレコードを確認すべきか、最新状況を把握するために Slack の会話とどう照らし合わせるか、そしてチームのパイプライン確認に向けて情報をどうまとめるか、といった具体的な手順を指定する役割を持ちます。
MCP サーバーとスキルを組み合わせる際、気をつけるべきは指示の矛盾です。MCP サーバーが「JSON で返す」としているのに、スキル側で「Markdown の表でまとめる」と指定してしまうと、Claude はどちらに従うべきか迷うことになります。接続処理そのものは MCP に任せ、情報の見せ方や実行順序、業務のロジックはスキルに委ねるのがベストプラクティスと言えるでしょう。
参考記事:必要な情報を段階的に読み込むプログレッシブ・ディスクロージャーや、MCP ツールを効率的に動かすプログラムによるツール呼び出しの仕組みについてご覧ください。
スキルと MCP を連携させた具体的な活用例
ここからは、実際の業務において両者がどう組み合わされるのかを見ていきましょう。企業価値評価のためにリアルタイムの市場データを取得する財務アナリストの事例と、Notion の Meeting Intelligence スキルを活用して会議準備を行うプロジェクトマネージャーの事例の2つを取り上げます。
いずれのケースにおいても、MCP サーバーがツールへのアクセスを提供し、スキルがそのアクセス権をどう活かすかを定義する構造となっています。
財務分析:企業価値評価スキルの自動化
Anthropic は先ごろ、類似企業比較法をはじめとする、財務ワークフローでよくある業務向けの事前構築済みスキルセットを公開しました。類似企業比較法とは、価値評価における標準的な手法の一つです。類似企業比較法に携わるアナリストは、複数の情報源から財務指標を集め、毎回同じ評価手法を適用し、コンプライアンス基準を満たすよう資料をまとめる作業に膨大な時間を費やしてきました。こうした反復的でミスの起きやすい作業領域こそ、まさにスキルと MCP の連携が大きな効果を発揮する場面です。
スキル:類似会社比較法がこの価値評価のワークフローを自動化します。複数の情報源からデータを取得し、一貫した手法で評価を行って、定められた基準に合わせて資料を作成します。
MCP サーバー:ライブ市場データを取得するための S&P Capital IQ、Daloopa、Morningstar への接続
ワークフロー:
- スキルが検索すべきデータソースを特定(Discovery / 情報の発見)
- MCP 接続を通じてリアルタイムの財務データを取得
- スキルが評価手法を適用し、資料を構成(Orchestration / 手順実行)
- スキルがコンプライアンス要件に沿っているか検証(Performance / パフォーマンス)
会議の準備:Notion のMeeting Intelligenceスキル
会議の準備は非常に手間の掛かる作業です。プロジェクトの資料、前回の会議メモ、関係者の情報など、様々な場所から背景情報をかき集め、事前資料やアジェンダとして整理しなければなりません。こうした複数の工程を伴う作業は、結局毎回やり方を説明することになりがちです。
スキル:Meeting Intelligenceが検索すべきページ、資料の構成、盛り込むべき項目を定義
MCP サーバー:ページの検索、読み取り、作成を実行する Notion への接続
ワークフロー:
- スキルがプロジェクト情報、過去の会議メモ、関係者情報など、確認すべき関連ページを特定(Discovery)
- MCP 接続による Notion 内のコンテンツの検索および取得
- スキルが社内用の事前資料と社外向けアジェンダという2つの文書を構成(Orchestration)
- 整理されリンク付けされた文書の Notion への保存
- スキルが、文書の形式が基準を満たしているかを確認(Performance)
スキルと MCP の使い分け
それぞれ異なる課題を解決するスキルと MCP ですが、実際の業務においてどちらを活用すべきか、判断に迷う場面もあるはずです。
スキルの導入が適しているケース
担当者の頭の中にとどまりがちな知識や、新メンバーが加わるたびに説明しているようなノウハウを形にするのがスキルの役割です。特に以下のような場面で威力を発揮します。
- ツールを使った複数の工程からなるワークフロー:複数の情報源から内容をまとめ、構成の整った文書を作成する会議準備など
- 手順の一貫性が求められる業務:毎回同じ手法に沿う必要がある四半期ごとの財務分析や、必須の確認項目が存在するコンプライアンス審査など
- 蓄積・共有したい専門知識:研究手法、コードレビュー、文章作成のガイドライン
- チームの担当者が変わっても維持すべき:再利用可能なルールとして言語化しておきたい、組織固有の知識
MCP サーバーの導入が適しているケース
MCP は、Claude がアクセスし、操作できる範囲を拡張する仕組みです。次のことが必要な場合は MCP を活用してください:
- リアルタイムなデータへのアクセス:Notion ページの検索、Slack メッセージの読み取り、データベースのクエリの照会
- 外部システムでのアクション実行:GitHub の Issue 作成、プロジェクト管理ツールの更新、通知の送信
- ファイル操作:Google Drive の読み書き、ローカルファイルシステムへのアクセス
- API 統合:Claude のネイティブサポートがないサービスに接続
結論として、何かを行う方法を説明する場合はスキルを、Claude にデータやツールへのアクセスをさせたいのであれば MCP を選ぶ形になります。
早見表:スキルと MCP の違い
| Skills | MCP | |
|---|---|---|
| 概要 | 手続きに関する知識 | ツールの接続性 |
| できること | Claude に何かをどう行うか教える | Claude に何かに対するアクセスを与える |
| 読み込むタイミング | 必要な場面でのオンデマンド読み込み | 接続後常時利用可能 |
| 内容 | 指示、スクリプト、テンプレート、アセット | ツール、リソース、プロンプト |
| トークンの扱い | コンテキストを保持したオンデマンドでの読み込み | 定義の事前読み込み |
| 適した用途 | ワークフロー、基準、手法 | データアクセス、API 呼び出し、外部操作 |
よくある質問
スキルは MCP の代わりになりますか?
いいえ、それぞれ解決する課題が異なります。MCP が外部ツールやデータへの「接続」を担うのに対し、スキルはその接続を効果的に生かすための「手順」を提供するものです。強力なワークフローにおいては、ほとんどの場合この両方を組み合わせています。
1 つのスキルで複数の MCP サーバーを使用できますか?
はい。単一のスキルで、複数の MCP サーバーを同時に動かすことができます。例えば技術的な競合分析スキルであれば、Google ドライブで社内のリサーチ資料を検索しつつ、GitHub から競合のリポジトリを取得し、さらにウェブ検索で市場データを集めるといった複雑な処理を一手に担うことも可能です。
1つの MCP サーバーに対して、複数のスキルを作れますか?
はい。キルを活用することで、単一の MCP 接続から得られる価値をさらに高めることができます。Notion は、会議準備、リサーチ、知識の蓄積、仕様から実装へといった目的ごとに、個別のスキルを用意するアプローチをとっています。こちらでご覧ください。
ご利用にあたって
スキルと MCP を使って構築する具体的なステップは、以下の通りです。利用を始めるには
スキルの場合:
- claude.ai の「設定」→「機能」からスキルを有効化する
- あらかじめ用意されたサンプルについては、スキルライブラリご覧ください
- スキルのドキュメントをお読みください
MCP の場合:
- 対象のツールに対応する MCP サーバーを探す
- MCP のドキュメントをお読みください
- MCP クイックスタートで独自のサーバーを構築
両方を組み合わせる場合:
- MCP サーバーを接続し、続いてそのサーバーを利用するスキルを追加する
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