ノボノルディスクは糖尿病治療薬「オゼンピック」の製造元であり、世界的な製薬企業として、糖尿病や肥満などの慢性疾患向けに革新的な医薬品を開発しています。同社は世界中の何百万人もの患者に人生を変える治療法を提供しておりますが、これらの治療は、患者のもとへ届く前に、膨大な規制関連書類の準備が求められます。
Claudeを活用ノボノルディスクは以下を実現しています。
製薬企業にとって、創薬から患者への提供までの道のりは書類作業の連続です。規制の厳しい業界であるため、ノボノルディスクが開発する新しい治療法ひとつひとつに、数百ページに及ぶ治験総括報告書という膨大な量の必要な書類が伴います。高度に技術的なデバイス検証プロトコル。複雑な治療法を消費者にわかりやすく説明するガイド。臨床試験文書の作成には、外部機関の助けがあっても、非常に多くの時間とリソースを要するため、組織が新薬を市場に投入する能力を遅らせる結果となっていました。
このプロセスの頂点となるのが治験総括報告書(CSR)であり、医薬品試験の結果を最大300ページに及ぶ文書にまとめたものです。CSRの作成は、執筆、レビュー、改訂、承認というサイクルが数か月間に及ぶ過酷なものでした。スタッフライターが1年間に執筆できるCSRは平均2.3件にすぎず、手作業によるプロセスは誤りや主観的な解釈が生じやすい状態が続いていました。
その重要性は、これ以上ないほど高いものでした。新薬の市場投入までの遅延が1日生じるごとに、製薬会社は最大1500万ドルの潜在的な売上高を失う可能性があります。さらに重要なことには、糖尿病、肥満などの慢性疾患の患者が、生活を変革できる治療を待ち続けているということです。
文書作成を、数か月かかる手作業のプロセスから、規制基準を満たすコンテンツを数分で生成する自動化システムへと変革しています。ノボノルディスクは、Claude CodeおよびAnthropicのパートナーであるMongoDB Atlasで構築されたAI搭載ドキュメントプラットフォーム「NovoScribe」を通じて、規制当局から常に高い評価を得ている規制文書を作成すると同時に、時間とリソースの要件を大幅に削減しています。
ノボノルディスクは、Amazon BedrockおよびMongoDB Atlasを基盤とした生成AIプラットフォーム「NovoScribe」の開発にClaude Codeを採用しました。Claudeモデルがシステム全体の基盤となる最先端のインテリジェンスとして機能しています。このプラットフォームは、検索拡張生成(RAG)と、専門家の承認を得たドメイン固有のテキスト、および症例固有の変数を組み合わせることで、正確かつ規制に準拠した文書を生成します。当初、チームはCSR作成のためのNovoScribeの完成に注力し、その後、デバイスプロトコルの文書化や被験者向け資料の作成へと範囲を拡大しました。
NovoScribeによる時間短縮効果は即座に、かつ顕著に現れました。ノボノルディスクのデジタル化戦略ディレクターのWaheed Jowiya氏は次のように述べています。「Claudeの導入により、CSR作成時間を90%削減でき、文書を直接担当者の手に渡して、レビューと承認を得ることが可能になりました」
これら自動化されたCSRのレビューから承認までのサイクルも、レビュー担当者が臨床的解釈と成果物の全体的な品質にますます満足するにつれて、大幅に短縮されました。新たな臨床試験において、チームは完全な試験説明書と被験者向けガイドを1分未満で作成できるようになりました。これら文書の作成には従来、外部機関との数か月にわたるやり取りを必要としていました。
また、これらのユースケースにおける技術的な設定は、それぞれ異なっていました。被験者向け冊子へのRAG構成の適応には最小限の時間を要しましたが、デバイスプロトコル向けのレガシーシステム統合には、非構造化データを取り込むために数か月の開発期間が必要でした。「規制が厳しい業界では、自社のデータや情報をただ大規模言語モデルに投げ込み、上手くいくように願うというようにはいきません」とJowiya氏は述べます。「Anthropicとの対話により、計画立案や戦略的タスク、コード生成においてClaudeを安全に活用する方法が明確に示されました」
実際、チームが抱える最大の課題の1つである、過去の研究文書からデータを抽出するという問題をすでにClaudeが解決してくれたと同氏は付け加えます。
Claude Codeの採用は、ノボノルディスクの製品開発を根本から変えました。現在では、非技術系チームのメンバーもアイデアのプロトタイプを作成できるようになりました。分子生物学の博士号を持つJowiya氏もその一例で、プログラミング経験はほとんどありません。同氏はアイデアを思いついた時、Claude Codeを使えば、技術的な仕様や開発チームに渡すチケットを用意する手間をかけずに、自然言語で素早く概念実証(POC)を生成できると述べています。
「これにより、私やディレクターのLouiseのような科学分野の専門家が、開発プロセスにこれまで以上に大きな影響力を及ぼすことが可能となります」とJowiya氏は語ります。
わずか11名という比較的小規模な開発チームにおいて、メンバーが数日や数週間ではなく数時間でプロトタイプを立ち上げられる能力は、戦略的な推進力となりました。今や、誰でも製品の開発者になれるのだと同氏は説明します。「Claude Codeのおかげで、簡単に実験をし、素早く意思決定し、迅速に改善を繰り返して製品を市場に送り出すことができるようになりました」
この俊敏性により、チームは小さな規模を維持しながら能力を劇的に拡大させることができました。これにより人員の拡大を回避し、従来のアジャイルプロセスに伴うオーバーヘッドなしに、チームが迅速に動く能力を維持することが可能になりました。
今日、NovoScribeは、ノボノルディスクの文書作成に対するアプローチの転換を象徴しています。このシステムは規制当局から肯定的な評価を得ています。これは、この厳格な監視下にある業界において、おそらく究極の認証と言えるでしょう。臨床試験報告書の自動化を目的として始まった取り組みは、組織全体に拡大し、ノボノルディスクにおけるデバイス検証プロトコルから被験者向け資料に至るまで、あらゆる業務の進め方を変革しました。
その成果は明らかです。かつては部門全体を要した文書作成作業が、今では1人の担当者で対応可能です。レビューサイクルが半分に短縮されました。何よりも重要なのは、医薬品がこれまで以上に迅速に患者のもとへ届けられていることです。
同社は組織全体でClaudeの適用範囲を拡大し続けています。メディカルアフェアーズ部門でパイロットを実施中で、より幅広い開発に向けた計画を進めています。また、医薬品承認に必要な包括的な規制申請書類であるコモン・テクニカル・ドキュメント(CTD)の作成プロセス全体を自動化することを目標に、NovoScribeの現行機能を拡張するためにClaude Codeを活用しています。
今後を見据え、ノボノルディスクは臨床試験からより深い洞察を引き出し、データインフラストラクチャの最新化を進めるために、データ分析におけるClaudeの可能性を模索しています。Anthropicとのパートナーシップにより、医薬品開発におけるAIの役割に対する同社の考え方が根本的に変わりました。
コンテンツデジタル化担当ディレクターのLouise Lind Skov氏は次のように述べます。「医薬品開発における文書下およびコンテンツの自動化において、当社は常に先駆的な役割を果たしてきました。AnthropicおよびClaudeとの協働により、新たな基準を確立しました。単なる業務の自動化にとどまらず、医薬品の創薬から患者へ届ける方法、そのものを変革しているのです」