L'Oréalは世界最大の化粧品およびビューティーカンパニーとして、150か国以上で事業を展開し、スキンケア、ヘアケア、メイクアップ、香水分野にわたり、37以上の国際ブランドのポートフォリオを擁しています。 同社はAI、データ、デジタル機能を最先端の研究とイノベーションと組み合わせて、ビューティーテック分野のリーダーとして自らを位置付けています。
従来型のAIアプリケーションの開発や導入を長年続けていたL'Oréalは、2023年に生成AIの取り組みを開始しました。 同社はセキュリティ、ガバナンス、ビジネス価値を維持しながら、世界中の従業員全体にAI機能を民主化する必要がありました。 主要な課題の1つは、従業員が技術的な専門知識を必要とせず、また各問い合わせごとにカスタムダッシュボードを開発することなく、データにアクセスし分析できるようにすることでした。
L'Oréalは、数学、コーディング、SQL生成を伴う複雑な分析タスクおよび財務タスクのために、特に従業員が自然言語で質問をして正確な洞察を得られる対話型分析のために、高度な推論能力を必要としていました。また、市場投入までの時間を短縮し、市場シェアを伸ばし、製品処方の開発を加速させる一方で、反復作業を排除し、従業員がより価値の高い業務に集中できるようにして、生産性を向上させることを目指していました。
L'Oréalは、ユースケース全体にわたる厳格なテストを経てClaudeを選定しました。 L'Oréalのエージェントプラットフォームおよびラボ責任者のThomas Menard氏はは次のように述べています。「LLMを審査官として活用するなど、当社の自動評価機能は多様なユースケース、特に複雑なケースにおいてClaudeモデルの優位性を数多く実証してきました」
特に対話型分析に関しては、L'OréalはClaudeのパフォーマンスを検証するために広範な実地テストを実施してきました。Claudeの高度な推論能力は、社内で最も要求の厳しいアプリケーション、特にユーザーの信頼構築のために精度と信頼性が重要となる対話型分析において、不可欠であることが実証されました。
L'Oréalは、高品質な推論能力を必要とするAIコンパニオン内での使用と、GitHub CopilotやClaude Codeといったツールを通じたソフトウェア開発ライフサイクル全体での使用という、主に2つの方法でClaudeを活用しています。
対話型分析では、Claudeは複数の専門エージェントの主要なオーケストレーターとして機能し、これらのエージェントが連携してユーザーの質問を洞察および可視化へと変換します。従業員が自然言語で質問をすると、ClaudeはセマンティックAPIエージェント、データ検索システム、そして、計算、製品マスターデータ、地理マスターデータ用専門エージェントと連携します。
このオーケストレーションアプローチにより、Claudeはユーザーの質問に基づいて連携させる専門エージェントを判断し、それらの作業を調整し、結果を補足的なデータ可視化とともに明確な回答にまとめます。L'Oréalはすべてのタスクを単一のモデルに依存するのではなく、特定の機能向けに専門的なエージェントを構築しました。 計算については、Claudeは専用の計算エージェントに処理を委任します。製品の寸法については、Claudeは製品マスターデータエージェントに委任します。 地理クエリは、地理マスターデータエージェントが処理します。
このアーキテクチャにより、潜在的な精度の問題が軽減されます。「ハルシネーションのリスクは、チームが追跡し軽減しています」とMenard氏は説明しています。 特定の種類のクエリを目的に構築されたエージェントに処理を割り当てることで、このシステムではさまざまな分析タスクで高い精度が維持され、Claudeによりワークフロー全体が管理され、結果が統合されます。このシステムは、ユーザー認証とアクセス制御を管理しながら、L'Oréalのビューティーテックデータプラットフォームに対し、自然言語でクエリを実行します。
このアーキテクチャの有効性はテストにより証明されています。Menard氏は次のように述べています。「社内テストを通じて、Claude 3.7、次いで4、そして現在の4.5 Sonnetがユーザーのご要望を満たすサブエージェントを駆動する能力において、他を圧倒する最も高性能かつ先進的なモデルであることが実証されました」
精度への影響は顕著に現れました。L'Oréalでは、対話型分析アプリケーションの精度スコアは、従来の生成AIアプローチの90%に対して、現在では99%に達しています。この改善を通じて、従業員はこれらの新しい機能を大規模に採用することに信頼と自信を深めています。
従業員によるデータの扱い方法で変化があったことも同様に重要です。従業員は、特定の質問ごとにカスタムダッシュボードを構築するのではなく、自然言語で質問を投げかけるだけで済むようになりました。これにより、L'Oréalの従業員が情報にアクセスして分析する方法が根本的に変わりました。
L'Oréaの社内AIプラットフォームは広く採用されており、ユニークユーザー数は、1日あたり15,000人、1週間あたり33,000人、1か月あたり44,000人に上り、複数のモデルを通じて月間250万件のメッセージを生成しています。 30~50人の開発者でClaude Codeを早期にテストしたところ、エンジニアリングの生産性において有望な結果が見られました。
今後を見据え、L'Oréalは、社内におけるエージェントAIは依然として初期段階にあると見ています。「エージェント機能の導入が本格化されつつあり、当社はビューティーテックの最前線に立つためにも、Anthropicのモデルに期待を寄せています」とMenard氏は述べています。 同社はエージェント機能を拡大し、Anthropicとの提携を深化させることで、競争の激しい化粧品業界におけるビューティーテック分野のリーダーとしての地位を維持していく計画です。